2023年通信簿 シーズン総括 ベンチ

【2023年成績】 143試合 70勝68敗5分 .507

続投報道が急転しての井口監督が退任して、しかし混迷するかと思われた後任はほんの一週間で吉井監督に決まりました。
コーディネーターとして球団に残ったときからそういった話がされていたのかもしれず、そう思えるような爆誕です。
これといった補強も無くよって自称評論家どもに下位予想をされて、それでも一時期は首位に立って二桁の貯金を稼いで中盤戦以降のいつもの失速にCS圏外に弾き出されるも粘り腰でCS地元開催を勝ち取り、最後はオリックスに屈しましたが2位でのフィニッシュは見事でした。
2位は2年ぶりですが意外なことに70勝に届いたのは伊東ロッテが3位だった2016年以来で、劇的な勝利も多く、なかなかに楽しめたシーズンでもあります。

おじさんキャラ

選手時代の同僚、関係者に言わせれば吉井監督は瞬間湯沸かし器でドアを蹴壊したりするなどのエピソードが伝え漏れたりもして、しかし投手コーチのときもそうでしたが別人のように、人が変わったのか理性で抑えているのか、すっかりと人のよいおじさんキャラが定着しています。
スーパー安田だのダイナマイト山本だの昭和チックな雰囲気が漂うネーミングもそうですが、仰木監督を師としてのことかもしれません。
チームが昨季と顕著に変わったのは職場環境で、おそらく当人たちは他意無く無邪気に語ったっぽい週ベの特集で「チームとして、今年は何が変わったのでしょうか」の問いに対して山口が「雰囲気はよくなりましたよ。ベンチが明るくなりました」と、藤原は「試合中もそうですけど、ほかの時間もいい感じにやれています。それがチームとしていい結果になったのかなと思います。吉井監督はフレンドリーで選手のことを第一に考えてくれるので、とてもやりやすい環境です」が全てではないかと、賛否あるでしょうがベンチで選手と一緒に感情を出しているその姿は昨年まではほとんど見なかったシーンでもあります。
敗戦時のコメントも選手を追い詰めることなく、実は言っていることは井口監督とさして変わらなかったりもしますが煽りながらも笑いを込めるなどの配慮もしていて、投手が気持ちよく投げるのが一番、コーチ時代に口にしていたそれを全体にはめてのものだったのでしょう。
故障や不調には「本人が大丈夫と言っている」とはせずトレーナーやサブロー二軍監督の意見を尊重して最後は自らが決める、組織としてのマネージメントもきっちりとしていて、ただのおじさんじゃない、井口監督の辛辣でもなく栗山監督の鼻につくものでもない、その「言葉力」が吉井監督の一番の魅力だと考えます。

方針

周りの評価はともかくとして、チームが未成熟の認識が吉井監督には強かったのだと思われます。
何かを変えようと秋の時点で「一度壊すのがセオリー」とこれまでの考えをいったんリセットして、フェニックスリーグで試合後に選手が総括する青空ミーティングをやったり秋季練習でとにかくバットを振らせたり、変化を期待させるスタートでした。
練習に対する考え方は「チームプレーはしっかりと行うが、実技の練習に関しては個別の時間を多めに設定して、自主的に取り組んでもらう」とこれも井口監督と似ていてメジャー経験者だからなのか、サブロー二軍監督も「我がチームの指導方針は『教えない指導』、選手が自ら考え、自分で答えを出して、上手くなる術を身につける。選手が質問してきた時や考え込んで答えに困っていた時、初めて手を差し伸べてあげる。よってコーチの人たちは、選手をよく観察する様になる。コーチ業はまずは見てヒントを探すこと。そして気づかせ屋である事。野村いわく『人に言われたことは忘れるが、自分で覚えた事は忘れずにずっと覚えている」、野村って野村監督なのかな、とそれに沿ったような発言をして筒香に対する大村コーチもそうだったような、よいことだとは思います。
打撃陣については「昭和のころに言われたような一番は足速くて、二番は小技効いて、三番好打者、四番ドカーンみたいなのが本当に正しいのかをもう1回考えたい」「四番もあまり足遅かったら、先頭で出塁しちゃうとなんぼヒット打たないとホームまでかえって来れないとか」「一二番によく打つ打者がいた方が点入るんじゃないか」とあれこれ試行錯誤したのがカメレオン打線とも呼ばれたオーダーの非固定に繋がったのでしょう。
野村監督にも短期間であれ師事していいところについて問われて「選手を信頼した起用法ですね。失敗しても、同じ選手を何度でも使う。選手のモチベーションは上がるので、見習いたい」と、これは例えばスクイズを失敗した友杉を叱らずしかし再びの失敗には厳しめに、美馬にも一度目は早めに戻して二度目の炎上では期限を設けずと言動一致していて、昇格させた選手を即スタメン、大事な場面でリリーフ、にも納得感がありました。
井口監督とは違う固定主義、顔ぶれを変えながらスタメンには基本的には4打席を与えるスタンスもここまでの発言を鑑みれば矛盾はありません。

意固地

一方で隠せなかった性格なのか意固地なところもあって、カメレオンがカメレオンのままで終わったのが面白くはありませんでした。
まるでBIGBOSSのトライアウトのように手を替え品を替え、プレシーズンの結果を無視したかのように四番井上が象徴的でしたが結果を残した小沼、平沢が二軍スタートなのにダメだった佐々木千、大下が一軍と首を傾げるような起用が無かったわけでもありません。
あれこれ試すのもよいですが開幕から3試合続けて四番をすげ替えて、かと思えば聖域とミニ聖域にこだわったのかこだわらされたのか、リスペクトがあるにしても美馬や益田や澤村や中村奨や、ベテランやチームの顔には苦言を呈さず甘い吉井監督ではありました。
現実として数字を残している茶谷、和田、池田らをもっと使えばもうちょっと何とかなったのではないかと、そう思ったりもします。
意地が悪い見方をすればこういったベテランらには手を付けづらく「ここまで使ったんだから」の実績作りをしたのかもしれず、CS最終戦に中村奨がスタメン落ち、欠場となって「それが監督が考えるベストメンバー」が序章となるのか、それともそのままか、その答えは来季に出ます。

MAJOR

きっと今オフも目を見張るような補強があるとは考えづらく、よってまた吉井監督の手腕におんぶにだっことなるでしょう。
他球団も吉井野球に慣れてやりくりだけではシーズンを乗り切るのはさすがに無理、やりくりしているうちに骨格を形作っていきたかったですが来季はそれをやらないと、歯を食いしばって山口を四番に縛り付けるとか、そういったものを見てみたくもあります。
あれこれ不満もあった先を見据えているように見えてしかしチームの顔と称される面々、あるいは資金投下された選手には無償の我慢を続ける二面性が顕著だったのが続くようでは厳しくなりそう、BIGBOSS改め新庄監督はそれを始めました、吉井監督にも真のレギュラーを作り上げてもらいたいです。
チームのスローガンは「今日をチャンスに変える。」でしたが吉井監督のそれは「MAJOR」、楽しみにしていますので頑張ってください。

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