東野圭吾のガリレオシリーズ、劇場版の最新作となる「沈黙のパレード」です。
劇場版の前作とドラマの第2シーズンが2013年ですから9年ぶりはしかし福山雅治も北村一輝も柴咲コウもその年月を感じさせない若さは凄いと言うよりは怖ろしい、柴咲コウに至っては前作は出演せず第2シーズンもちょろっと出ただけですので実質的には第1シーズンからの14年ぶりです。
それでいてエンドロールでドラマでの映像が流れましたがその当時で既に40代ながらもあどけなさのようなものが残る福山雅治はこの9年で変化が分かりましたが、柴咲コウはほぼ変わらない、それが映像越しのものではあっても弛まない努力のたまものなのでしょう。
さすがにテレビ局が主導しての映画ですから出演陣もかなり豪華で、そんな中で重要な役回りを違和感なく演じていた飯尾和樹はすっかりと役者さんです。
主役は草薙警部
歌手としてデビューするためのレッスンを受けていた女子高生が行方不明となり、数年後に遺体で発見されます。
犯人として浮かび上がったのはかつて同様の事件の被疑者とされながらも完全黙秘に証拠不十分で釈放された男で、しかしその後に何者かに殺害されます。
過去の事件でも担当していてそこで解決できていれば今回の事件も起きなかった、そして殺害に関与したのは被害者家族やその周辺の人たちではないか、そんな二重の苦しみに懊悩しながらも警察官としての任務を遂行する草薙警部の存在感が抜群でした。
北村一輝のイメージがかなり変わるぐらいの熱演で、顔芸と言ってもいいほどの、その心の内があふれ出る演技には圧倒されます。
一方で変わらず飄々とした福山雅治の湯川教授、さりげなく柴咲コウの内海巡査部長にいつもの丁々発止の中で昇進を語らせていましたが、こちらも内に秘めた熱きものを時折に見せながらも経験の差が出てしまったような、謎解きを主導するのは湯川教授ですがやはりメインは草薙警部です。
違和感の無いストーリー
ストーリーとしてはここそこに伏線を見せびらかしてそのとおりに進んでいきますので、さほどのサプライズはありません。
そういう意味でも草薙警部を中心とした、被害者家族などの人間模様がメインだと思います。
それでも最後の仕掛けは意外でしたし、疑う余地はありましたが決定的な描写はされていなかったような、きっと見逃しは無いはずです。
原作を読んでいませんのでそれとどれほどの違いがあるかは分かりませんが、湯川教授がたまたまその地に赴任していて被害者家族が経営する食堂の常連だったなんて偶然はさておき無理すぎる展開も無く、またゆるキャラだったり髪飾りだったりの映像ならではの伏線も見事でした。
ここからはネタバレあり
もっとも偶然は例えばかつての事件の関係者が身近にいたりしたのはどうだろう、しかも鍵を握る人物でした。
また脅迫者が脅す相手をどう見つけ出したか、それらしきスマホのカットはありましたがそれだけで住所人物を特定するのは難しいはずです。
最後の究極の選択もどちらかが救われるではなく「沈黙」でどちらも救われたような、そこがよく分かりませんでした。
努力家でひたむきな女子高生が最後に性格の悪さを見せたのもああいったのが必要だったのか、ガリレオシリーズが電子書籍化されたら確認してみます。
2022年10月4日 鑑賞 ★★★★★(5点)