六歌仙暗殺考

六歌仙暗殺考    
講談社

六歌仙とは平安時代の勅撰和歌集である「古今和歌集」の序文に記された代表的な六人の歌人のことです。
その六人とは僧正遍昭、在原業平、文屋康秀、喜撰法師、小野小町、大伴黒主で、浅学にて在原業平と小野小町を除いた四人はここで初めて知りました。
代表的、とは言いながらも出自が不確かで二首の歌のみが伝えられる喜撰法師だったり、和歌そのものの出来に疑問を呈する向きもあるようです。
そんな六歌仙にちなんだ本阿弥光悦の手による歌仙絵をなぞらえるかのような連続殺人事件を、古美術研究家の南条圭が読み解いていくストーリーです。

中途半端の極み

六歌仙の歌仙絵を探すことを依頼された南条のところに、知己の刑事からその歌仙絵が現場に残された殺人事件の報が入るところから話が始まります。
その殺され方が歌仙絵に描かれた和歌に沿ったもので、そしてまた一人、また一人と続いて連続殺人事件となり次なる予告状も入り、事件は急展開します。
最終的にはそれが裏目に出て犯人が捕まりますが、その背景は戦時中からの壮大なものとしつつ深掘りが全く足りず、黒幕とされる人物を追い詰めることもできず、ただ犯人の手口と表面上の動機が明らかになっただけで肝心なところが中途半端に過ぎて、作品の出来としては中の下といったところでしょう。
どうやら南条圭を主人公とした二作目のようで作中にある刑事や記者と過去の事件について語るシーンが多々あり、どうやらそれが一作目で、中途半端な終わり方はもしかしたら三作目以降に何らかの繋がりが出てくるのかもしれませんが、残念ながらこの作品以外は電子書籍化もされていませんし絶版のようです。
そうなってしまうと作者の思惑とは外れることになりますからその責が無いにしても、さすがにここまでの消化不良は一作品としては問題ありです。
六歌仙にしてもさほど関係があるわけでもなくそれこそAKB48の神7でも話は作れそうな、もちろん1982年の作品ですから誰一人として影も形もありません。

2021年2月5日 読破 ★★☆☆☆(2点)

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