福家警部補の報告
東京創元社
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すっかりと本を読む機会を失って今年にようやく二冊目、2010年以来の少なさは日本一のシーズンだったりもしますが、ボケ防止に読書は欠かせません。
そんなこんなで福家警部補シリーズの第三弾はいつもどおりの倒叙形式は刑事コロンボと言ってしまえば若い人には分からないでしょう、犯人も事件のあらましも最初に明らかにしてそれをいかに解き明かしていくか、犯人と探偵役とのジリジリした攻防を楽しむものになります。
そうなれば謎解きではなくいかに犯人の綻びを見つけていくかの過程がポイントになりますがこのシリーズはそこが手前勝手で描写されていないものが鍵になることが多く、映像とは違って文字にしてしまえばバレバレになりがちなのはあるにせよ、どうもそこがイマイチではあります。
ちょっと毛色が変わった
基本的には短編集で少なめの三編が収録されていますから一編はやや長め、中編集といったボリュームです。
これまでと毛色が変わったのは二編目、三編目の犯人の動機が必ずしも悪とは言い切れないことで、やっていることは殺人ですからもちろん許されるものではないのですが、しかしそこに至る心情に思いを寄せてしまう、逃げ切ってくれないかと思いつつ読み進めるのはこれまでには無かったものです。
三編目などは逮捕後に福家警部補の捜査一課ではなく被害者に暴力団関係者がいたことで捜査四課に身柄が引き渡されてその移送中に逃走されてしまい、そんな犯人と福家警部補が再び相まみえるような終わり方が連作短編集への入り口に思えないでもありません。
シリーズは現時点であと二冊が既に発表されていますのでそこでまた出会えるのか、このペースではいつになるかは分かりませんが楽しみにしています。
2020年10月6日 読破 ★★★★☆(4点)