王とサーカス

王とサーカス
東京創元社

太刀洗万智シリーズの第二弾です。
とは言いながらもそんなシリーズに心当たりが無かったので調べてみれば、7年前に読んだ「さよなら妖精」がそれでした。
このときの万智は主人公ではなく、探偵役として脇で支える存在だったはずです。
それがいつの間にやらシリーズ化とは大人の事情でもあったのか、どこか古典部シリーズに似ているとはそのときの感想でしたが、どうやら当初はそのシリーズの第三弾として書いていたものが途中で掲載誌の読者層と合わないと改稿されたとのことです。
そしてこの作品では10年後にフリージャーナリストとなった万智がネパールで遭遇した、王族殺人事件が舞台となっています。

ジャーナリズムとは

この事件は2001年に起きたもので、前作でもユーゴスラビアの内戦が一つの鍵となっていますのでシリーズのポリシーなのでしょう。
万智は王宮に配属されていた軍人に取材する機会を得て密会のような形で会いますが証言を拒否されて、そして翌日にその軍人が背中に「INFORMER(密告者)」と刻まれた死体として発見されたことで身の危険を感じるとともに容疑者の一人とされて警察に連行されます。
しかし取材が原因であれば軍人とともに殺される立場のはずということで逆に警察に保護される形となり、事件の真相を探っていくというストーリーです。
真犯人は容易に想像ができましたし動機についても分かりやすかったので、ミステリーとしての出来はさしてよくもありません。
それよりも軍人が取材の際に万智に問いかけた「なぜ知りたいのか、なぜ伝えるのか」というジャーナリズムの根幹、王の死をサーカスのような見世物にしようとしているのではないか、との指摘こそが作者が書きたかったテーマではないかと思います。
事件が起きるまでが長くて取っ付きが悪いですしそういったテーマが根底にあるために全体的に暗く、思い出してみれば前作もそうでした。
それでいて世界のニュースをどこかドラマのように見ている自分に思い至ったりもして、後半1/3ほどを一気に読み進めたのがこの作品の評価を表しています。

2021年9月26日 読破 ★★★★☆(4点)

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