神様の裏の顔
角川書店
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元中学校校長が亡くなり葬儀に多くの関係者が集まって、娘姉妹、かつての同僚、教え子、自宅に作ったアパートの住人、隣人がその思い出を内に語ります。
退職後も恵まれない子どもたちのためのNPO活動に力を入れるなどの人格者、しかしそんな思い出の中に生徒の自殺、不慮の事故、ストーカー事件などが絡み合い、ふとしたことから故人が関係していたのではないか、神様とも尊敬されていた裏の顔が浮かび上がってくるというストーリーです。
横溝正史ミステリ大賞受賞作
これは久しぶりに先を読みたくなる、起承転結にどんでん返しと受賞に相応しい秀作でした。
作者は元芸人とのことで、デビュー作でもありまた登場人物のモノローグな形となっているのでかなりハードルの高い構成に稚拙な箇所もままありはしましたが、それを上回るジェットコースターのような上げ下げに圧倒されたというのが素直な感想です。
いわゆる伏線から謎解きをするというものではなくそういう意味では完全に受け手でしかないのが残念ではありましたが、人格者→実は犯罪者?→濡れ衣が晴れる?、そこからどうオチをつけるのかと思ったところでまさかの驚天動地、してやられました。
そして神様ではなく登場人物の裏の顔だったりもして、ある一人を除けばハッピーエンド、その一人も幸せであればよし、後味も悪くありません。
2021年7月14日 読破 ★★★★★(5点)