QED 諏訪の神霊
講談社
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4年ぶりのQEDシリーズですが、ここまでかなりの冊数を重ねていたこともあり主要キャラを忘れることなく入ることができました。
舞台は諏訪の地、諏訪大社の謎を解くべくタタルこと桑原崇に棚旗奈々が同行して、奈々の妹の沙織に熊つ崎こと小松崎良平がちょっと出だったのが残念でしたし奈々と外嶋との丁々発止が少なかったのも惜しかったですが、いつもの雰囲気はありましたので違和感もありません。
例によって神話の時代がテーマになっていて守備範囲から大きく外れてせめて諏訪氏を絡めて欲しかったりもして、またどこまで真に受けていい「解明」かが分かりませんし結界とか言われてしまうとあれだったりもしましたが、それでもなかなかに興味深かったです。
前後を掴みづらい
タタルと奈々の諏訪巡り、諏訪大社の御柱祭での事故、そして新興住宅地での連続殺人事件、この三つが交互に語られていきます。
しかし同時進行ではなく各々の時系列に前後があるのに気付いたのが1/3ほど読み進めたところだったために、その関係が掴みづらかったです。
ミステリーとしての連続殺人事件、これはこれで諏訪大社の謎、あるいは祭りに関係した生け贄だったりもしますがしかし脇道でしかなく、メインは建御雷神に追いやられた建御名方神、とは大国主命の子とのことですが、それが諏訪の地まで落ちて地主神である洩矢神を蹴散らして諏訪の神として奉られる経緯、そしてなぜ諏訪大社に上社、下社がありそれぞれに本宮、前宮、春宮、秋宮があるのか、神とされる御柱が切り倒され引きずられ川に落とされ雨ざらしにされ、そんなぞんざいな扱いをされているのはなぜなのか、真偽はともかくとして筋道立てて丁寧に説明してくれているので納得感はありました。
山の民、河の民、神に模された後に朝廷となった勢力と地方の豪族たち、それらの生き様が古事記や日本書紀などで語られている前提で読めばまた違った受け止め方をしただろうにと、現代訳を読んだのは中学生ぐらいのときですのでそのときの自分に言ってやりたかったりもします。
2021年11月20日 読破 ★★★★☆(4点)