真実の10メートル手前

真実の10メートル手前
東京創元社

太刀洗万智シリーズの第三弾です。
現役時代とは違って読書量がかなり減ったことでシリーズものは登場人物の背景などを忘れてしまいがちのため、間隔を空けずの立て続けです。
これまでとは違って短編集となっていて、発表の前後があったのでしょう、第二弾よりも時系列的に前の作品も含まれています。
しかし新聞社の記者であろうがフリージャーナリストであろうが万智の報道に対する姿勢、そしてシリーズとして問いかける「真実」に変わりはありません。
そういったメッセージ性がやや強いために純粋なミステリーとしての謎解きが浅いのは、これもシリーズの特徴です。

読者が考えるもの

そういうテーマもあってのことなのでしょうが、タイトルは第一弾の関係者が登場する「ナイフを失われた思い出の中に」が適していたようにも思えます。
しかしいずれも前作と同じく報道とは何なのか、が根幹となっていて、昨今のコロナ禍でも言われていることですが受け手への迎合でもないですが「望まれている結末」に誘導するようなものとなっていることへの危惧を提示しているように感じられました。
作者が後書きで記しているように万智を語り手にすると薄っぺらいものになってしまうため、取材に同行する人を登場させてその人が感じる万智を語らせることでその内面を探っていくやり方が見事にはまって、仕事としての報道とあるべき報道の中で揺れる心情をその乏しい表情で表現したりもします。
結末を書かずにどこか消化不良気味なところもありますが、そこからは読者が考えるものだと、そう突きつけられたのだと受け止めます。

2021年10月9日 読破 ★★★★★(5点)

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