賛否が分かれそうな戸締まり

新海誠の最新作となる「すずめの戸締まり」を観てきました。
基本は人混みが嫌いなので落ち着くまでは待つのですがもらえるものはもらっておきたい鑑賞特典は先着300万人、前作の「天気の子」も前々作の「君の名は。」も半月以内に突破しましたし昨日までで歴代最速ペースの133万人超えとなれば来週には無くなってしまいそう、自分にはかなり早い公開4日目です。
だからと言って劣悪な環境で無理まではしたくないため平日の22時前から日を跨いだ最終回に、降らない日を選んだつもりが帰りに雨に見舞われるという誤算はあったもののガラガラかつ時間帯からかポップコーンを食べる人もいない最高のコンディションで観ることができました。
そんなこんなで公開ホヤホヤですので観る予定がある方はそこそこのネタバレもありますから、ここでページを閉じることをオススメします。

圧倒的な映像美

ひょんなことで廃墟にある扉を開いて「要石」を引き抜いてしまった鈴芽(すずめ)は、その扉を閉める旅を続ける「閉じ師」の草太と出会います。
扉からは日本列島の地下にいる「ミミズ」が飛び出してそれが大きな地震をもたらし、鈴芽と草太は「要石」が転じた猫のダイジンを捕まえて再び封印すべく宮崎から神戸、東京、そして宮城とところどころの扉を閉じつつ追いかけっこをしていくというストーリーです。
圧倒されたのはやはりその映像美でこれまでに比べればいかにもCGというシーンもままありましたが、それを見せ付けるためにも思える無駄なカットではあれ細かなところまで手抜きをせずに描き上げるのは新海誠の真骨頂でしょう、そこだけでも充分に楽しませてもらいました。
ジブリ後の両巨頭ともされる細田守に対する大きなアドバンテージで今後もずっと守り続けてもらいたく、そして展開が早く間延びすることなくアニメにしては長めの122分があっと言う間で、それこそ180分ぐらいでもよかったかも、もっと観ていたかったです。
テーマとしては過去を振り返らずに未来を信じて生きていく、といったところか、タイムパラドックス的な手法への是非はさておきプロローグをクライマックスできれいに拾いましたし、そこにサプライズはありませんでしたが大きな破綻も無く手堅くまとめた印象が強いです。

3.11に絡める必要があったのか

ただ3.11に絡める必要があったかは疑問で、被災者やその関係者には複雑な思いを抱かせることになりかねず賛否両論となりそうです。
そこを突っ込んではいけないと分かってはいても宮崎から東京まで何の準備もなく飛び出していった高校2年生はどうやってお金の算段をしたのか、交通系ICカードを使うシーンでフォローしたのでしょうがチャージ上限で無理でしょう、その情報を見れてしまう叔母の環(たまき)もガバガバです。
偶然は主人公の特権ですがダイジンを追う過程で「たまたま出会った人」に自転車や自動車で送ってもらったり泊めてもらったりは現代ではありえない人情社会で危険ですらあり、懐メロなんてのを流したことからして古き良き時代への郷愁を込めたのかもしれません。
東京駅で叔母や草太の友人と「思いがけず」に出会うのもそう、事故った自動車のすぐ側に空気も抜けていない放置自転車があるのはさすがにやりすぎでした。
そもそも鍵を握るダイジンの行動原理も腑に落ちず、鈴芽が「要石」を引き抜く前から草太は扉を探していたのですからその後に扉から出てきた「ミミズ」はダイジンがきっかけでもなく、草太を椅子に変えながらも最後は実はいい奴だった的な存在になりましたがエピローグで振り返ってもらえない哀しさです。
例によっての声優陣はまあ無難でしたが下手くそだった草太の友人がエンドロールで神木隆之介にはびっくり、草太の祖父に松本白鸚は大作ならではです。

2022年11月14日 鑑賞  ★★★★☆(4点)

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