終末のフール

終末のフール
集英社

小惑星が8年後に地球に衝突すると発表されてから5年、当初は混乱した社会もいつの間にか落ち着いて、あと3年に迫ったの人々の生き様が、親娘の相剋、新しい命の誕生、マスコミに妹を殺された兄弟の復讐、目標を果たす若い女性、トレーニングを続けるキックボクサー、自殺を図る男、姉や母や孫を演じる女優、櫓を作る父親とその家族、そんなそれぞれの情景が連作短編集として描かれています。
しかし各話の登場人物が別の話に出てくることはあっても本筋に影響を与えず、関連があるわけではありません。
何とも不思議な作品でミステリーでもない、サスペンスでもない、もちろん純文学でもない、言うなれば伊坂ワールドといったところです。

人生とは、死とは

最後に登場人物が勢揃いして大団円になるのではないかとも思っていましたが、それもありませんでした。
話としては各話で締めくくられていて、しかし何か結論めいたものがあるわけでもなく、その先は読み手が考えるような終わり方です。
そういう意味ではモヤモヤ感が残りますし全体的に重苦しく、読んでいて面白いものではありません。
社会全体が約束された死に対して登場人物の考え、行動を背景に「あなたならどうする」と問われているかのような、若い人にはピンとこないでしょうし老い先短い自分でもこのコロナ禍でもそういったことを考えてもいないだけにどこか上滑りして、求められる読者層にはマッチしていなかったようです。

2021年11月2日 読破 ★★★☆☆(3点)

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